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Googleの組み立て式スマホ「Ara」に膨らむ期待 “5000円台で買える”は本当?
記事提供:TechTargetジャパン

「Project Ara」は、モバイルデバイスを持たない50億の人にスマートフォンを提供するために、米Googleが開始したプロジェクトだ。Googleの研究開発部門「Advanced Technology and Projects(ATAP)」が発案したProject Araは、革新的なアイデアとなる可能性を秘めている。安価なモジュール型のスマートフォンを開発し、古くなったパーツを取り換えられるというものだ。

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Project Araで開発するスマートフォン(以下、Araスマートフォン)が実用化されれば、より長持ちするバッテリー、より高性能なカメラ、より高速なプロセッサを搭載したデバイスにアップグレードしたいときに、新しいスマートフォンを1台丸ごと購入する必要が無くなる。コンシューマーは、スマートフォンのモジュール型コンポーネントを取り外し、パーツ単位でデバイスをアップグレードできる。

本稿では、現時点で明らかになっているProject Araに関する情報を紹介する。

情報1:2015年1月までにリリース

現時点で開発されているのは、実際には機能しないプロトタイプのみである。だがGoogleが発表している計画によると、2015年1月までに第1世代のAraスマートフォンがリリースされる予定だという。試作段階のプロトタイプのデモは2014年9月に予定されている。またGoogleは、米国で販売する前にAraスマートフォンを発展途上国で公開する可能性がある。

情報2:価格

Googleは「お手ごろ感」がAraスマートフォンの主なメリットだと主張する。第1世代のAraスマートフォンの基準価格を50ドルに設定し、より高価なモデル(約500ドル)も展開すると発表している。

高価なモデルには、恐らくパフォーマンスが高く、仕様のレベルが高いモジュールが搭載されるだろう。基本モデルには、フレーム(後述する「Endo」)、ディスプレー、バッテリー装置、メインアプリケーションプロセッサのモジュール、Wi-Fiモジュールが搭載される。

重要なことが1つある。提示されている50~500ドルという価格帯は、製造原価のみを反映したものだという点に留意されたい。具体的な販売価格については、まだ発表されていない。

情報3:デザイン

独立したタイルで形成されたモジュールは磁気で固定され、Endoという名前のフレームによってまとめられる。モジュールメーカーは、ユーザーのニーズに合わせたタイルを作成するために3Dプリンタを使用する見込みだ。

モジュールは、Googleが最近リリースしたオープンソースの「Module Developers Kit(MDK)」に基づいて作成する(MDKでは、Araスマートフォンと互換性があるハードウェアのデザインに関するガイドラインが定められている)。サードパーティーのメーカーは、自由自在に機能を組み合わせてタイルを開発できる。機能を制限するのは、モジュールのデザイナー自身が自らに課す限界のみだ。

情報4:サイズ

Endoは「Mini」「Medium」「Large」の3サイズで展開する予定だ。Miniのサイズはポケットサイズのメディアプレーヤーと同じくらいになる。Mediumのサイズは現在のスマートフォン、Largeのサイズは人気急上昇中のファブレット(大画面スマートフォン)と同じになる。デザインプロトタイプの厚みは全て9.7mmだ。

情報5:寿命

スマートフォンの寿命はプロジェクトAraで対処すべき主要な問題の1つだ。Googleによると、Araスマートフォンが使えなくなるまでの平均耐久年数は5~6年だという。ユーザーは2年くらいのサイクルでスマートフォンをアップグレードする傾向がある。つまり、この数値は市場に出回っているスマートフォンの寿命の約3倍に当たる。

情報6:利用可能なOS

取替え可能なモジュール型コンポーネントを制御可能なAndroidは現在開発中である。プロジェクトAraのリーダーは、このAndroidの開発は「Araスマートフォンのリリースと同時期の2015年1月に完了する」と予想している。

情報7:製造

スマートフォンの製造にオープンソースアプローチを採用しているという点で、プロジェクトAraは他のプロジェクトと一線を画している。コンシューマーは、特定のメーカーからスマートフォンを購入するのではなく、サードパーティーが開発したモジュールを購入してフレームにはめ込むことができるようだ。

モジュールの購入はオンラインに加え、実際の店舗でも可能になるだろう。コンシューマーは既製のモジュールを購入するか、3Dプリンタで仕様に基づいたモジュールが作成されるのを待つことで、その場で納得できるスマートフォンを手に入れることができる。

情報8:ホットスワップ可能なモジュール

Endoに組み込まれているバッテリーにより、Araスマートフォンでは電源を入れたままモジュールを交換することが可能だ(この組み込みのバッテリーは、スマートフォンの操作に使用するバッテリーとは個別に機能している)。つまり、ほぼ全てのパーツについて、取り外しや交換時にスマートフォンの電源(主電源を含む)をオフにしたり、再起動する必要はない。これは既存の他のスマートフォンでは基本的に不可能である。

プロジェクトの成否を占う

米科学雑誌『Scientific American』に掲載された記事「The Problem with Lego Phones」(Lego Phoneが抱える問題)で、筆者のデイビッド・ポーグ氏は、功罪はさておき、決して大衆に受け入れられることがないと自身が考える概念について辛辣な見解を述べている。

ポーグ氏は、物理学的な観点から経済学的な観点に至るまでさまざまな観点から、モバイルデバイスでモジュール型のアプローチを採用した場合に生じる弊害を指摘している。それは「大きい」「重い」「遅い」「発熱量が多い」「壊れやすい」「見た目が美しくない」スマートフォンができ上がるという問題だ。

ポーグ氏は、デザイナーのデイブ・ハッケンス氏が考案した「PhoneBloks」の概念にも言及している(プロジェクトAraではPhoneBloksが公式に採用されている)。米AT&Tや米Verizon Wirelessなどの携帯電話サービス会社が、スマートフォンを毎年アップグレードする機会を奪うテクノロジーを採用して、貴重な財源を断ち切るために足並みをそろえるとは到底思えない。

米Compass Intelligenceでチーフモバイルアナリストを務めるゲリー・パーディー氏は、プロジェクトAraの背後にある概念について「検討に値する興味深いテクノロジー」だと発言している。一方、このプロジェクトの出ばなをくじく主な要因の1つとしてコストを挙げる。

Googleは「お手ごろ感」をAraプロジェクトの主なメリットの1つとして位置付けている。特に発展途上国では、これまで高価なスマートフォンに手が届かなかった人でも、スマートフォンを購入できるようになるというのがGoogleの主張だ。

だがパーディー氏は、モジュール型のアプローチを採用すると、「最終的には市販されている最新のスマートフォンよりもコストが高くなる」と指摘する。「大量生産されたスマートフォンは、個別に製造されたコンポーネントよりも必ず安価になるはずだ」というのが同氏の論拠だ。

そして、次のように説明する。「メーカーが大量のスマートフォンを製造すると、コストを低く抑えること可能になる。最終的には“廃棄できるかどうか”と“潜在的にコストが高いコンポーネント”の間のトレードオフになる」

パーディー氏は、米Appleの「iPhone」を例に説明を続ける。モジュール型のコンポーネントを使用するよりも、コンポーネントを統合すれば、高速で小型でバッテリーが長持ちするスマートフォンを提供できる。「バッテリーは完全な正方形でなくても構わない。Appleのリチウムイオンの製造技術により、ケース内の電子装置にピッタリ合うバッテリーを作ることが可能だ。そのため、未使用の領域を効率的に活用して、より長い時間持続するバッテリーを実現できる」

プロジェクトの現段階において、Araスマートフォンの個別のモジュールに掛かる実際のコストについてはほとんど議論がなされていない。この概念がコンシューマーにとって節約の選択肢となるのか、コストが高くつく選択肢となりAraスマートフォンの製品実用化の足かせとなるのかは、現時点では未知数だ。